今話題の江戸東京野菜

伝統野菜の栽培状況について研究員の説明に聞き入る消費者グループ(東京都農林総合研究センター江戸川分場で)
(写真・河野千年)

新聞記事

2010年2月17日

(10) 施設導入で長期収穫

特産・伝統野菜の活用と生産性向上

 東京都農林総合研究センター(保科次雄所長)では、旧・農業試験場時代から東京の伝統野菜についての試験研究を取り上げてきた。最近では平成十七年度から三年間、「特産・伝統野菜の活用および生産性向上」について取り組んできた。

 1989年以前に育成されたコマツナの固定種は、最近の交配種に比べて苦味成分等が少なく歯ごたえもよかった。伝統品種の食味の良さを周知させることで栽培復活とコマツナの消費拡大に結び付いている。

 亀戸ダイコンでは、葛飾区の農家が代々栽培してきたが、一月〜三月が収穫適期とされ、良品栽培の技術は農家個人の伝統的技術にゆだねられていた。それをパイプハウスや遮光資材を活用し、栽植密度などを検討した結果、十月〜六月まで安定した収穫が可能となった。

 また、九月播種の大蔵ダイコンは、青首ダイコン並みの株間でマルチ無しのものが形状は良好であった。

 遺伝資源として、品種保存も行われており、肉質の緻密な金町コカブや白茎の亀戸大根、大田区馬込に伝わる馬込三寸ニンジンなどがあるが、伝統野菜は夏場の野菜品種が少ない。そこで、江東地域で栽培されてきた銀マクワ(縞模様のマクワウリ)や、高級食材のもろきゅう用キュウリなども農家による栽培が待たれる遺伝資源である。

(財)東京都農林水産振興財団 大竹道茂