今話題の江戸東京野菜

(上)種をまく子どもたち (下)芽が出た砂村三寸ニンジン

新聞記事

2010年9月16日(最終回)

(16) 食文化の変遷を実感

子どもが体験栽培

 江戸東京野菜の取り組みは、貴重な遺伝資源を次の世代に残したいという思いから始まっているが、現実は消費者が食べなければ、再び消えてしまう。おかげ様で、品川カブにしろ、寺島ナスにしろF1種との差別化が出来ることから生き残れるとの見通しがついた。

 今年は、砂村三寸ニンジン復活の取り組みが明治期に開校した砂町小学校で始まった。タネはジーンバンクから分けてもらったが、貴重な種でわずか1グラム。

 8月26日、タネの贈呈式に続いて、子供たちに、砂村三寸ニンジンの他、江戸時代の滝野川ニンジンの血を引く「大長ニンジン」と現在市場に出回っている「五寸ニンジン」のタネをまいてもらった。これらは暮れに学校給食で食べてもらい。砂村三寸ニンジンだけは食べずに来年タネを採り、出来た沢山のタネを子どもたちが蒔いて、開校120周年の記念に花を添える計画だ。三種類のニンジンから、子どもたちは「生物の多様性」を学び、とりもなおさす食文化の変遷を体験する。

 砂村三寸は馬込三寸と共に、色鮮やかで可愛らしく、しかも甘いと聞くから、都民の注目を引き、江戸東京野菜を始め東京野菜全体の認知度をさらに底上げして、東京の農業を引っ張って行ってくれる一品になることと期待している。

 江戸東京野菜の復活普及は、農政活動の一手法として、今後も農家の皆さんと取り組んでいく。

(公財)東京都農林水産振興財団 大竹道茂